CASE STUDIES バックオフィスと面付け工程をデジタル化
クラウド&自動化ツールで業務時間を月24時間削減

品川区自動化ロボット化導入推進事業 バックオフィスと面付け工程をデジタル化クラウド&自動化ツールで業務時間を月24時間削減

バックオフィスと面付け工程をデジタル化
クラウド&自動化ツールで業務時間を月24時間削減

製造業 クラウド活用 デジタル化 付加価値向上 業務効率化 デジタル技術活用推進助成(ソフトウェア)

山下マテリアル株式会社

所在地 東京都品川区南品川3-5-13
設立 1965(昭和40)年
事業概要

主に産業機器などに用いられるフレキシブルプリント配線板(FPC)の設計・製造・販売を行う電子部品メーカー。プリント回路の設計から製造、電子部品・電子デバイス実装、電子機器の開発・設計から組立まで一貫生産体制を持つ。

従業員数 124名(2025年1月時点)
URL https://www.yamashita-net.co.jp/

課題背景

・勤怠・人事・給与管理が紙中心で、回収・入力作業の負担が大きかった
・面付け作業が属人化し、検討時間が長く品質にばらつきが生じていた
・業務が部分最適にとどまり、全社的なデジタル化が進んでいなかった

実施概要

・クラウド型勤怠・給与管理「ジョブカン」を導入し紙運用を廃止
・面付け最適化ツール「FlexLAYOUT」を導入し工程を自動化
・助成金を活用し、事務・製造両部門でデジタル化を推進

成果

・勤怠管理や面付け作業で月約24時間の業務時間削減を実現
・業務の属人化解消と品質の安定化を図り作業ミスによる廃棄材料の削減
・全社的なデジタル化を推進し、生産性向上を実現

FPC事業を支える全社DX推進とデジタル化の背景

―御社がデジタル化に取り組んだ背景について教えてください。

 

山下:

当社では生産管理の基幹システムから人事・給与システムまで、あるメーカーのプライベートクラウド型運用を行ってきました。
しかしサーバーの構築・保守費用の負担が大きく、契約期間も数年単位と長いため、サブスク(月極め)の感覚で利用でき、他のシステムとのデータ連携もしやすいパブリッククラウド型のシステムへの移行を検討することにしました。
最終的には生産管理システムの見直しが目標ですが、まず取り組みやすい人事・給与システムから始めることにしたのです。

そこで品川区の助成金を活用して、令和4年度にバックオフィス業務の効率化を目的として「ジョブカン」を導入しました。
また、令和7年度には製造前工程の生産性向上を目的に「FlexLAYOUT」を導入。事務部門と技術・製造部門の両面からデジタル化を進めることで、部分最適ではなく、全社的なDX・デジタル化推進につなげたいと考えています。

 

2名の画像

 

 

 

 

 

▲山下 輝樹さん(左)・関口 裕太さん(右)

導入前の課題

紙中心の勤怠・人事管理が招いていた業務負荷

―それでは、まずバックオフィス業務についてお聞かせください。導入前にはどのような課題があったのですか。

 

山下:

総務部の現状分析を行ったところ、「紙ベースでのやり取りが多い」「紙提出→データ入力などの二度手間が発生している」という弱みとともに、「安価なITツールが多数市場に展開されている」という機会があることが明確になりました。

実際、当社では勤怠申請、残業申請、各種人事届出、給与明細の配布など、日常的な管理業務の多くを紙ベースで運用。
従業員が記入した書類は社内便で総務部に集められ、担当者が内容を確認しながらシステムへ手入力していました。
座間にある工場内には複数の書類棚が点在しており、1日2回、従業員が回収・配付を行っていましたが、その作業だけでも相当な時間を要します。
また、手入力によるミスや確認作業、差し戻し対応も発生しやすく、担当者の負担が大きい状況でした。

実施内容

全従業員に利用してもらうため、導入目的やメリットを繰り返し説明

―導入プロセスで工夫した点や、苦労した点はありますか。

 

山下:

総務部の勤怠管理担当者を中心に、現行業務の洗い出しとシステム要件の整理を行い、複数のサービスを比較検討しました。
ベンダーとはオンラインでの打ち合わせが中心でしたが、問い合わせへのレスポンスが早く、安心して導入を進めることができました。

紙からデジタルに移行する書類としては運用のしやすさを考え、社外と関わるものよりも、まずは社内で発行・提出するものに絞りました。
それでも、勤怠関連では勤務表や作業日報、シフト変更届、休日出勤届など、人事労務関連では給与明細、年末調整、入退社関係書類など、会計関連では社内領収書などがあります。
また、ランチを発注するための食券もデジタル化することで、回収箱からピックアップする必要がなくなりました。

苦労したのは、全従業員が利用するシステムであるがゆえに、紙運用からの切り替えに心理的なハードルがあったことです。
私物のスマートフォンで勤怠申請を行うことに抵抗を示す従業員もいました。そのため、導入目的やメリットを繰り返し説明したり、社内にアクセスポイントを設置するなど理解を得ながら段階的に移行しました。

勤怠・給与業務の作業時間を月14時間削減。リアルタイム把握で管理の質も向上

―導入後の運用状況と、その効果について教えてください。

 

山下:

現在は従業員がスマートフォンや社内PCから勤怠申請を行い、上司が承認した後、総務部が「ジョブカン」上で最終確認を行っています。
勤怠データはそのまま給与計算システムに連携され、給与明細もWeb上で確認できるようになりました。その結果、紙でのやり取りが勤怠・人事労務で48%、経費精算や食券回収まで入れれば86%を削減することができています。

そうして勤怠管理・集計・給与計算にかかる工数が大幅に削減され、月あたり約14時間の作業時間削減につながりました。
2名体制だった勤怠管理業務を1名で回せるようになり、締め作業後の残業も減少。
管理職にとっても部下の勤怠状況がリアルタイムで把握できるようになり、マネジメントの質が向上しています。

システムのコスト面では、以前はプライベートクラウド型人事給与システムと別のクラウド勤怠サービスを併用して月額20万円弱かかっていましたが、ジョブカンに移行して50%近く削減できました。
また、初期費用や、以前のシステムの契約終了までの移行期の費用についても、品川区の助成金を活用することで負担が軽減できています。

 

属人化と時間や材料のロスが課題だった、面付け工程

―次に「FlexLAYOUT」について、導入前の課題を教えてください。

 

関口:

FPCの量産前工程で行う「面付け」作業は、生産性や製造コストに直結する重要な工程です。
従来は、頭の中で配置を考えながらCAMソフトで手作業による配置検討を行っており、多くの時間を要していました。

また、設計担当者5名の中で作業の経験やスキルに依存する部分が大きく、面付け品質にばらつきが出やすい点も課題でした。
回路の回転角度が90度単位に制限されていたため、十分な最適化ができず、材料ロスが発生しやすい状態でもありました。

既存CAMとの高い親和性が導入の決め手。助成金活用も後押しに

―「FlexLAYOUT」導入のきっかけと、選定理由を教えてください。

 

関口:

社長からデジタル化を推奨されたのを受けて、面付け作業の自動化・効率化を検討する中で、その存在を知りました。
複数の製品でデモを行い比較検討しましたが、「FlexLAYOUT」はもともと使っているCAMソフトと同じメーカーのため連携がスムーズで、作業者にもとっつきやすい点が評価ポイントでした。

また、価格と機能のバランスが良く、品川区のデジタル技術活用推進助成を活用できたことも、導入を後押しする要因となりました。

自動面付けを組み込んだ新たな設計フローの定着

―導入後の運用状況を教えてください。

 

関口:

設計グループにて、従来のCAM編集作業の前段階として「FlexLAYOUT」を利用しています。ソフトが自動生成した複数の面付け候補の中から、より効率の良い案を選択し、CAMへ取り込む流れです。現在は1ライセンスのみとしており、私が代表して「FlexLAYOUT」を使い、他のメンバーからデータをもらって、
案ができるとフィードバックする形をとっています。まだ導入初期段階のため、案件ごとの向き不向きを見極めながら、活用に関するガイドラインや運用ルールの整備を進めているところです。

導入後の成果

面付け検討時間を月25時間→10時間へ。属人化解消とコスト削減も実現

―導入による効果はいかがでしたか。

 

関口:

導入したことで、面付け検討にかかる時間は、月25時間から10時間へと大きく短縮されました。属人化が緩和され、配置品質が安定したことも大きな成果です。
自由な角度で配置できるようになったことで、同じワークボード内により多くの回路を配置でき、材料廃棄量の削減や製造コストの低減にもつながっています。

 

―御社のデジタル化における、今後の展望をお聞かせください。

 

山下:

まず、設計や生産部門では面付け工程以外にも、生産性向上や効率化につながるものがあれば積極的に導入を考えたいです。
将来的には、センサーなどで取得した製造データと生産管理システムを連携させるなど、より高度なデジタル化を目指していきたいと考えています。

バックオフィス業務については、今回取り組んだ労務・人事領域にとどまらず、幅広くデジタル化を進めていきたいと考えています。
具体的には、会計領域でも他のソフトウェアと連携させやすいシステムへの移行を検討。そして、最終的な目標は生産管理の基幹システムの刷新です。
引き続き、ITを活用して業務の標準化と属人化の解消を進め、持続的な業務改善につなげていきたいですね。

これからDX・デジタル化に
取り組まれる方へのメッセージ

最近ではSaaS型ツールが普及し、以前よりも低コストでデジタル化に取り組める環境が整っています。これまでのように「自社のやり方にシステムを合わせる」のではなく、業務そのものを見直し、シンプルにした上でシステムに合わせることが重要でしょう。まずは身近な業務から着手し、小さな成功体験を積み重ねることが、デジタル化推進への近道だと思います。

interviewのイメージ
山下マテリアル株式会社 専務取締役 山下 輝樹さん/技術部 設計グループ 課長代理 関口 裕太さん

ライター 久保田かおる